2019/01/28『地面師~他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団~』を読んで思う家族信託の大切さ
昨年かなり話題になった積水ハウスの地面師事件。
多くの方が「地面師」という言葉を
初めて聞いたのではないでしょうか?
そして、日本人の誰もが知っている1部上場企業の
積水ハウスがまさか55億円もの被害にあうなどとは
だれが思っていたことでしょうか?
これら事件に登場する「地面師」というものに
フォーカスしたノンフィクション本
「地面師~他人の土地を売り飛ばす詐欺集団~」を
読んでみて、財産管理の大切さを改めて痛感いたしました。
◆地面師とはなんぞや!?
『地面師』とは、いったいどんなものかという前に、
不動産を売ったり、買ったりしたことがある方は
ご存知なことだと思いますが、
不動産取引における流れをおわかりいただいたほうが
理解しやすいと思います。
不動産の売買をする際には、不動産売買代金の支払いと
同時に所有権を売主様から買主様に移転する手続きを
行います。
この一連の作業は、買主様の融資先の銀行やお付き合いのある
銀行で行うことが多いです。
そこに売主様、買主様とともに取引を仲介した不動産業者と
所有権移転の手続きを行う司法書士の先生が立ち会います。
そこで司法書士の先生が売主様の本人確認を行い、売主様ご本人の
本人確認と所有権移転の意思を確認して、問題なければ
売買代金を買主様から売主様に振込するというのが一般的な
流れです。
地面師事件は、ニセの土地所有者が本物の土地所有者として
巧みになりすまし、実際の土地所有者の知らない間に
その不動産を売り飛ばしてしまうというのが、
地面師事件といわれるものです。
◆事件化されにくい地面師事件
今回被害額が大きかったということもあり、積水ハウス事件は
かなり話題になりましたが、同様の事件が都内を中心に
頻繁に行われているようです。
どの事件も一人で行うということはなく、何人ものグループで
犯行を行うようです。
その犯行グループには、司法書士や弁護士なども加わっている
こともあるようです。
仮に事件が明るみに出ても、自分は騙されていたとか
気づかなかったと言えば、そこから先に警察の捜査が
及びづらかったり、仮に逮捕されても不起訴になってしまうと
いうことが多々あるようです。
事件の中には、本当の所有者から気づかれて、実際に
所有権の移転を行う前に、登記が行われずに済むケースもあれば、
実際に通常の売買と同様の手続きを終えて、所有権移転まで
済ませてしまっているケースもあるようです。
誰も気づかずに通常の取引のように終えた不動産売買の場合、
土地を手に入れた不動産業者が、また更に他の不動産業者に転売し、
その不動産業者が土地を区割りして、一般の方々に分譲して、
今は戸建てがいくつも建っていて、そのお家で普通に生活をしている
という現場が都内にはあるようです。
今当然自分の土地だと思って生活をしている人の土地が、
本来は他人の土地だったということです。
これは恐ろしい話です。
◆空き家が地面師に狙われる
地面師の犯行グループは、不動産の所有者本人に
なりすませるような土地を常に物色しているようです。
狙われやすい土地は、やはり空き家になっている土地や
荒れている土地などが狙われやすいようです。
そのような土地の所有者は、長年その土地に出入りを
していなかったり、長期の入院や介護施設に入っている
ことが多く、事前の本人確認がしにくいという特徴が
あります。
いま問題になっている空き家の問題は、このような犯罪の
温床にもなるということです。
現在所有者が不明の土地の面積を合計すると九州全体の
面積よりも多いと言われています。
家族化が進み、子世代は別に持ち家を持っているケースが
非常に多くなってきています。
親が認知症になってしまい、親が住んでいた実家を売却しようと
思っても、認知症になっているので、売却の意思確認ができないため、
売却できないというケースが多々ございます。
そのような場合は、空き家になってしまい、そのまま
手入れをしていないと荒れ放題の土地になってしまいます。
そのような土地で、価値の高い場所であれば、地面師に狙われやすい
土地となります。
そのようにならないためにも家族信託という制度を使って、
お元気なうちにお子さんに財産の管理・処分を任せるという
手段が非常に有効です。
家族信託を利用すれば、仮に親が認知症になってしまったとしても
お子さんの意思で、空き家になってしまった実家を
売却することができます。
とにかく、お元気なうちに対策を講じることが何よりです。
この本を読んで、生前からの財産管理がとても重要だと
いうことを改めて思いました。
皆様もぜひ家族信託をご検討ください。
この本を読んだら、きっと何か対策をしないとまずいと
感じると思います。
ノンフィクション作品としても面白い作品だと思いますので
ぜひご一読ください。
今日もありがとうございました。