認知症の簡易知能検査で広く使わている『長谷川式簡易知能スケール』をご存じでらっしゃいますでしょうか?

認知症が疑われる際に、認知症かそうでないかを簡易的に判定するのに行われるテストです。

このテストを開発したのが、精神科医で、日本の認知症研究の第一人者である長谷川和夫先生です。

この長谷川先生ご自身が認知症を発症されて、現在、認知症と向き合いながら生活をされており、その様子をNHKスペシャル『認知症の第一人者が認知症になった』のなかで特集をされていました。

その感想を書いていきたいと思います。

 

 

◆長谷川先生が認知症研究に人生を捧げるきっかけになった出来事

長谷川先生が担当していた患者さんが若年性アルツハイマー型認知症を発症していたそうです。

その患者さんが亡くなられた後に、その患者さんの奥様からご主人様の想いが綴られた五線紙を渡されたそうです。

その五線紙には、このようなことが綴られていました。

『僕にはメロディーがない。和音がない。共鳴がない。帰ってきてくれ。僕の心よ。すべての想いの源よ。再び帰ってきてくれ。あの美しい心の高鳴りは、もう永遠に与えられないのだろうか』

この想いが綴られた五線紙のメモをみた長谷川先生は、ボロボロと泣かれて、こうおっしゃったそうです。

『勉強として認知症になると脳がどのようになっていくのかはいっぱい研究してきたけれども、患者さん本人の心の中をみたのははじめてだ』と。

長谷川先生はこの出来事をずっと心に秘めながら、

『これはもう絶対にこの道は、認知症に対する研究・診療は、何が何でも続けるぞ』と心に誓ったそうです。

 

私も長谷川先生には到底およびませんが、私が認知症対策として家族信託の普及活動に力を入れ始めたのもやはり、ある出来事がきっかけでした。

親の介護を理由に長期休職をしていた、私よりもはるかに若い方との出会いが、私の心に火をつけました。

こちらのブログもご覧ください。

これから私と同世代の団塊ジュニアの方々が、親の介護を理由に離職や休職をすることが多くなってくるかもしれないと思い、何とか家族信託を普及して、少しでも子世代の負担を減らすお手伝いがしたいと思うようになりました。

これを私の後半の人生のライフワークにしようとおもったきっかけです。

 

◆認知症の親とその家族とのかかわり方

私自身、まだ認知症の家族がいるわけではなく、色々なところで見聞きする認知症のことしかわかりません。

ご本人のつらさや歯がゆさ、支えるご家族のご苦労などは、私自身まだ経験をしたことがありません。

長谷川先生ご自身も、ご本人が認知症になってみてはじめて、そのつらさや大変さがわかり、

『そんなに生やさしい言葉だけでは、人様に申し上げることはできないな』と思ったとお話されていました。

 

長谷川先生の介護は、奥様とお嬢様が中心となって、ご自宅で介護をされていました。

介護する側・される側の心の葛藤も、映像の中で描かれていました。

介護される長谷川先生は、話が良く伝わらなかったりすると家族に迷惑がかかるからということで、話すことをなるべくやめて、自分の殻に引きこもることが多くなった時もあったようです。

その際にはうつ状態になってしまって、死んでしまいたいと思うこともあったとお話されていました。

 

一方介護する奥様やお嬢様も様々な葛藤があり、介護する側の負担を少しでも減らすため、デイサービスや介護施設の利用をしてみたりもしていました。

ところが、デイサービスに行っても独りぼっちの長谷川先生は、デイサービスの利用をやめてしまいました。

実は、デイサービスという施設の提唱も長谷川先生ご自身が考えられたものでした。日中、介護するご家族の負担を少しでも減らすことを目的に、長谷川先生が提唱されたそうです。

ところがご自身が利用するとなると他の利用者や職員の方とのコミュニケーションがうまくいかずに、やめてしまったということでした。

 

介護する側の負担の軽減と介護される側の人間としての尊厳との葛藤が、改めて難しい問題なんだなと気づかされました。

 

◆避けては通れない介護の話

我々団塊ジュニアがあと5年から10年すると、多くの方が避けては通れない介護という問題がやってきます。

この番組を拝見し、色々と考えさせられることが多くありました。

ですが、これをしたら正解ということはないと思います。

介護する側の負担と介護される側の尊厳をうまく折り合いをつけていくしかないのだろうなという以外は正直わかりません。

ですが、認知症の方の財産管理の面で、私がお手伝いできることがあるのであれば、全力でサポートさせていただこうと改めて強く思いました。

今後も家族信託の普及に尽力していこうと思います。

今日もありがとうございました。