2019/09/28家族信託のご相談の中で実感したこと
家族信託のご相談をお受けする中で、感じたことをお伝えしようと思います。
家族信託とは、ご両親様が認知症になってしまったとしても、ご両親様の財産が凍結しないように、お子様がご両親様の財産管理をするという契約を事前に親子間で締結しておく制度のことです。
認知症による財産凍結で特に気を付けておかなければならない財産や、短期間で認知症になってしまうことのリスクについてお伝えしていこうと思います。
◆認知症による資産凍結で最も気を付けなければならない財産は!?
認知症による資産凍結で特に気を付けなければならない財産は、
『不動産』と『定期預金』になります。
不動産に関しては、名義人の方が認知症になってしまった場合には、売却することは絶対にできません。名義人の方が『売却する』という意思表示ができませんので、司法書士の先生は所有権移転の登記を絶対に行いません。
そのような状況になってしまった場合には、名義人の方が亡くなり、その不動産を引き継いだ相続人の方が売却をするしか方法はありません。
ご相談させていただいていたお客様の言葉で印象的だった言葉がございます。
『親が施設に入ったとしても、いつ亡くなるということが誰にも分らないので、空き家状態になるのが1年かもしれないし、10年になるかもしれない』ということでした。
実家にご両親様以外住んでいないという場合には、ご両親様が入院や施設に入所してしまうと、空き家状態になります。その状態がいつまで続くのかは誰にもわかりません。
もしも空き家状態になってしまった場合には、維持管理費もかかりますし、固定資産税もかかります。1戸建ての場合には、定期的な清掃や除草なども必要になってきます。
老朽化により屋根や壁が傷み、台風などの際には、第3者へ損害や危害を与えかねない状況になる可能性も考えられます。
そこで、ご両親様がお元気なうちに『家族信託』という制度を使って、財産管理をお子様に任せておけば、ご両親様がお持ちの不動産をお子様が売却することができます。場所にもよりますが、不動産を売却すれば数百万から数千万円の現金となり、それをご両親様の介護費用に充てることができれば、資金的にも非常に助かるはずです。
また、ご両親様の世代は、将来や老後のためにということで、コツコツ定期預金で貯金をされてきた方が非常に多いのではないでしょうか?
ところが、名義人の方が認知症になってしまうと、せっかく老後の為にと貯金してきた預金口座が凍結し、定期預金の解約ができなくなってしまいます。金融機関によっても異なりますが、通常定期預金の解約を行う際には、本人確認ができる書類や登録した銀行印などが必要になります。認知症になってしまっていて、本人確認ができなければ、解約できずにお金をおろすことができなくなってしまいます。
これもご両親様が元気なうちに『家族信託』という制度を使って、お子様に管理を任せておけば、お子様がご両親様のためにその財産を使うことができます。
ご両親様名義の『不動産』と『定期預金』の管理は、ご両親様がお元気なうちに、誰がいつからどのように管理をするのかを決めておくことが非常に大切です。それができれば、ご両親様も安心してより良い老後が迎えられるはずです。
それができないまま、ご両親様が認知症を発症された場合には、老親の介護方針をめぐって、子供同士でいがみあうという悲劇が現実にあります。
◆老後2,000万円問題は、本当なのか!?
金融庁の金融審議会の市場ワーキンググループの報告書に、「老後30年で約2,000万円が不足する」という趣旨の報告がされ、その点が世間では大きな話題になっています。
ところが、その報告書には、
『特に2025年には、いわゆる団塊の世代が75歳を迎える年とされる。75歳を超えたあたりから認知症有病率は大きく上昇するとされており、今から準備を始めることが重要』とも書かれているのです。
お元気なうちから財産管理について考えることが、本人だけではなく子世代にとっても、とても重要な問題となっています。
不安を煽るわけではないのですが、『老後30年で2,000万円が不足する』というのは、あながち間違っているとは言えないのではないかというのが私の印象です。
といいますのも、様々な方々のご相談に乗らせていただいている中で、現在の預貯金額や受給している年金の額などをヒヤリングさせていただきます。
すると厚生年金に加入されていた一般的なサラリーマンのご家庭の方の場合、ご夫婦で月に20万円から25万円くらいの年金を受給しているというケースが多いように思います。
一方で、介護施設に入所した場合にどのくらいの費用がかかるのか!?
これは施設にもよりますが、一般的な介護付き有料老人ホームの場合に、埼玉県内の施設であれば入居一時金が0円から数百万、月額利用料が介護保険の負担等、諸々の諸経費込みで、25万円前後というのが平均のようです。
すると、ご両親様が介護施設に入所した場合には、1人当たり約10万円前後は毎月赤字になるということです。更に認知症によってご両親様の財産が凍結したらどうでしょうか!?お子様たちが残りの介護費用を捻出できますでしょうか?
◆認知症は、短期間の間に急激に進行する場合がある
私が家族信託のご相談にのらせていただいていたお客様で、2か月前までお元気で、実家で一人暮らしをしていたのに、今は配偶者の方のお名前やご自身の誕生日もわからなくなってしまっているという方がいらっしゃいました。
ご病気をきっかけに入院され、2か月後にはそのような状態になってしまったケースです。このようなケースもございますので、早め早めの認知症対策が必須です。
健康寿命と平均寿命の開きが約10年近くある今の時代は、相続対策と同様に認知症対策が必須の時代になっています。
2019年10月12日(土)の13時から16時の予定で、上尾市文化センターにて、
『認知症』から老後の財産を守るための『家族信託』セミナーを開催いたします。
ご自身の老後を安心して迎えられるようにと思っていらっしゃる方や、ご両親様の介護についてご不安があるという方のご参加をお待ちしております。
詳しくは、こちらをご覧くださいませ。
今日もありがとうございました。